早朝旅行

緊急事態宣言の緊急性はどこへ行ったのか、もはやわからなくなってきた昨今。年が明けてからは緊急事態宣言が発令されている期間の方が長い、そんな東京。

男の一人旅行なぞ景色を見て美味しいものを食べてホテルでまったりするだけであり、口を開くことなどないのだから飛沫の飛びようがない。しかし、やはり世間体を考えれば、自ずと地方への旅行は憚れてしまうものだ。それならば近場で済まそうという発想に至るわけだが、東京都内の雑踏へ赴く気は起きない。無論、わざわざ毎日のように都内で満員電車に揺られているからでもある。

そんな中でも旅行へ行きたい、非日常を味わいたい欲求が湧いてきたある夜、突然「朝の海を見たい」欲求が爆発した。翌朝の始発で鎌倉へ向かうことに決めた。

 

朝4時、起床に成功。駅までのバスも走っていない時間なので駅までは徒歩である。電車は座席が一人おきに座っているような状態。初電あるある、思いの外乗客がいるを観測する。乗り換えた先の電車では私を含め3人しか同じ車両に乗っておらず、空気輸送状態であった。

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江ノ電に乗り換え、由比ヶ浜駅で降車。まだ6時代である。海までの道を歩くが、カーブに差し掛かる度にこの先に海が広がっているのか、という期待に胸が躍る。かれこれ十度程、期待と落胆を繰り返すこととなった。

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由比ヶ浜に到着。

サーフィンをしている人がちらほら、散歩をしている人がちらほら、三密は皆無である。

後々に砂の処理が面倒になることが頭をよぎったが、海に来るとテンションはやはり上がってしまうもので、靴を脱ぎ、足だけではあるが海へと入る。

予測に反して海水は暖かく、泳げそうな水温である。水泳部に所属していた読者ならおわかり頂けると思うが、温水でないプールの10月の練習の方が過酷である。

砂の処理に10分を要した。

まだ7時半。鶴岡八幡宮へ向かう。土休日は混み合うと話題の小町通りも人っ子一人いない。無論、店は開いていないが本来の目的が海を見ることなのでそんなことは気にも留めない。

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鳥居を潜り、参詣。

境内を散策し、御神籤を引くとこれが凶であった。内容をありがたく拝読し、ネジを締め直した。

時刻は8時半を回り、そろそろ観光客もやって来るであろうから朝食がまだであったことを思い出し、駅前のカフェへと避難した。先客が2名程いたが、広い店内ではほぼ貸切状態である。

パンとコーヒーを啜り、休憩。

時刻は10時。

ここまで密を避けることを徹底した旅行であったが、午後からは都内での予定が入っていたのでそろそろ出発。

午後の予定を済まし、一日を振り返りながらこの文章を認めているが一日が三日に感じられるほど長く充実したものであった。

結局、人混みへ向かうという結末ではあったが、少なくとも白眼視されるような旅行ではない上手な旅行を楽しむことが出来たのではないか。コロナとの生活をどのように切り抜けていくかは人それぞれであるが、一日でも早くかつての日常が戻ってくれれば幸いである。